キミが泣くまで、そばにいる
階数表示を見ながら、思い出す。
「うちの病院だよ。アカツキが行ったのは」
緑が鮮やかなイチョウ並木の下で、だるそうにカバンをさげたまま、セイは私を見下ろしていた。
「病院って……なんで?」
そう尋ねた私に、「行けば、わかる」とそっけなく答え、病院名と住所が書いてある名刺を突き出した。
「セイは、アカツキから何か聞いてるの?」
「俺は何も聞かない」
ただの真顔なのに、セイには不思議な迫力があった。
「場所が場所だから事情は知ってっけど、頼まれもしねーのに、自分から首を突っ込んだりしねえよ」
腹が立つくらいワガママで、人のことを平気で傷つけるヤツなのに、セイはやっぱり、常人が持ち得ないオーラを持っていると思った。
天から祝福されてるみたいに、木漏れ日で金色の髪がきらきら光る。
「ほかの奴らだって同じだ。うすうす何か感づいてっかもしんねーけど、アカツキが何も言わない限り、俺たちは何もしない」