キミが泣くまで、そばにいる
病室と同じ階にある談話室には、テーブルと椅子と、簡易ソファが置かれていて、入院患者やその家族がおしゃべりをしていた。
空いていた一角に、月乃さんと並んで座る。
「あの、すみません、急に来たりして」
「ううん、いいの、ありがとう。あっくんのこと、心配してくれたんでしょ?」
朱里から聞いてるよと言って、月乃さんは優しく笑う。
「お母さん、ですよね……?」
いばたともえ。
部屋番号の下に書かれていた名前を思い出す。
いつかアカツキが言っていた言葉が、頭に浮かんだ。
――母親は……ちょっと事情があって、今、家に帰れないから
「ここ10年くらい、入院したり退院したりの繰り返しでね」
月乃さんは、化粧っけのない眉を少しだけ下げた。
となりのテーブルにいたおじいさんが、プラスチックのコップを持って給水機に近づいていく。ひどくゆっくりした足取りだ。
おじいさんの動きを目で追いながら、月乃さんは続ける。