キミが泣くまで、そばにいる

 
 病院の中庭は緑の芝生が敷きつめられて、遊歩道にはベンチもあり、ちょっとした公園になっている。

 ぎらぎら照り付ける太陽を避けて日陰のベンチに腰を下ろし、アカツキはぽつりと言った。

「セイがここを教えるとはね」

「ごめん。勝手なことして……」

 ベンチ脇に立ったままうつむくと、アカツキは「座んなよ」と座面を軽く叩いた。

「いいよ、別に隠してたわけじゃないし」

 思いがけない声の明るさに、王子の顔を見る。

 私の視線に気づき、彼はふっと笑った。

「別に、暗くなる必要はないよ。もうずっと前から、分かってたことだから」

 普段通りにニコニコしている。でも、眉尻のあたりが少し寂しそうだ。

「アカツキ……」

「だから、知紗がそんな顔しなくていいんだって」

 横から頬をむにっとつままれた。

 痛い。
 
 でも、泣きそうになったのは、頬の痛みのためじゃない。

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