キミが泣くまで、そばにいる


「いいんだよ。うちの家族はみんな、覚悟ができてるんだから」

 アカツキのお母さんは、数日前から昏睡状態に陥っているという。

 担当の医者から、もう永くはないと、告げられた。

 平気な顔でそう言うアカツキの心を、想う。

「むしろ、ほっとしてるかも。ずっと苦しんできてたから、ようやく楽になれるのかなって」

 よどみなくしゃべる彼を、見上げる。

「どうして、アカツキは笑うの?」

 もし自分だったらと思うと、とても平気でなんていられない。

 大切な人を失うとわかったら、周囲に泣きついて、わめいて、胸に溜まった悲しみや怒りを全部発散させて、それでもきっと、感情は次から次へと溢れ出して止まらないに違いない。

 学校でも、家族の前でも笑ってるアカツキは、いったい、いつ感情を爆発させるの? 

 どこで、泣くの?


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