キミが泣くまで、そばにいる
大きな手が、ふわりと頭に触れる。
「笑いたいから……笑ってる」
アカツキの声も表情も、教室にいるときと同じで、私は悲しかった。
彼は、私みたいに単純じゃないのだ。
悲しいから泣いて、嬉しいから笑うなんて、赤ん坊みたいに曇りのないまま生きていける人間ばかりじゃない。
感情を押し殺し、心をかたく閉ざし、そうやって何かを守ってる人もいる。
急に思い知った。
私は何もできない。
笑うことで強くあろうとしているアカツキは、助けなんて求めていない。
どこからか、セミの声が聞こえはじめた。
少しでも生きた証を残そうと、懸命に鳴いている。
見上げると、青空を分かつように、細い飛行機雲がまっすぐ伸びていた。