キミが泣くまで、そばにいる


「微笑み王子がいないと、このクラスってすっごい静かなんだね」

 私の机に頬杖をついて、レミがぽつりと言う。

 いつも人だかりができていた窓側の席は今、しんとしている。

 取り巻きの女の子たちは、別のイケメンを求めてほかのクラスに遠征しているらしい。


 アカツキという黄色い花が咲いていないと、ハチも蝶も、集まってこない。

 教室から何か大切な物が抜け落ちてしまったような不安定さを、みんなも無意識に感じ取っているのか、教室内はどことなくそわついている。

 と、廊下がにわかに騒がしくなった。

「あー久しぶり!」

「どーして休んでたのぉ?」

 女の子たちの声に、私は勢いよく顔を上げる。

 取り巻きに囲まれながら、アカツキがドアをくぐって教室に入ってくるところだった。

< 232 / 273 >

この作品をシェア

pagetop