キミが泣くまで、そばにいる
アカツキの目は大きくて、真っ黒で、見てると吸い込まれそうになる。
でも今、アカツキの目に力はない。
ただ無機質な光を映してるだけの、空っぽの目だ。
――知紗ちゃんの前では、素の自分を見せてる、でしょ?
ケーキを食べながら笑っていた朱里さんの言葉が、ちくっと肺を刺す。
甘すぎる生クリームを大量に飲み込んだあとみたいに、胸のあたりがもやもやする。
私に素の自分を見せてるなら、どうして、そんな目で笑うの?
「本当に平気だから。その話はもういいよ。今は別の話」
教室にいるときみたいな笑みを張り付けて、アカツキは私の手を取る。ひどく冷たい手だ。
「うちの地元でさ、8月の終わりに花火大会やるんだよ。だから――知紗?」
繋がった手を引っ張って、私はビルとビルのあいだの路地にアカツキを引っ張り込んだ。
人がひとりやっと歩けるような狭い通路で、アカツキに向き直る。