キミが泣くまで、そばにいる
ぎくりとして、足を止める。そのまま立ち去ればいいのに、動けなかった。
「真辺は忠犬だからねー。所詮犬だよ。気にすることないって」
「ていうか、そばにいていいなら、あたしだって犬になりたいんだけど」
「うちもそれ思ったー。彼女じゃないんだし、忠犬なら何匹いてもいいじゃん」
「だよね。うちらも犬にしてもらおうよ。つか真辺はイヤイヤやってんでしょ? だったらうちらが変わってあげれば万々歳じゃん」
そっときびすを返す。胸が鼓動していた。
そうか、と思った。まさに目からウロコ。
忠犬はなにも一匹じゃなきゃいけないってわけじゃない。
アカツキはいつでも別の子を犬にできるし、いつでも私を放り出すことができる。
「あ、知紗」
声に、足を止める。階段を上がってきた生徒のなかに、微笑み王子の姿があった。
「ちょうどよかった」
満面の笑みを浮かべて、彼はおいでおいでと、手首を振った。