キミが泣くまで、そばにいる




 今日は終業式で学食が利用できないため、学食前のホールは静まり返っている。

 自動販売機のボタンを押しながら、アカツキは私を振り返った。

「知紗も買う? 桃?」

「……いちご」

「え?」

 きょとんとしているアカツキの横から手を伸ばし、ボタンを押すと、イチゴミルクが吐き出された。

「どうかした? いつもは桃茶なのに」

「なんとなく、気分で。あ、お金」

 ポケットからお財布を出そうとしたら、アカツキは首を振った。

「今日はおごり」

「え……あ、ありがとう」

 イチゴの絵が描かれたパックに目を落とす。美味しいけど甘ったるくて、最後まで飲みきれないから、普段はあまり買わない。

 でもアカツキはこれが好きだ。


< 254 / 273 >

この作品をシェア

pagetop