キミが泣くまで、そばにいる
微笑み王子の顔面に振り下ろした右足は、すんでのところで足首を掴まれ静止する。
尻餅をついた状態で、アカツキは叫んだ。
「み、見てない! 見てないから知紗! 落ち着け」
「ウソだぁぁ! 見たぁぁ!」
「いや、この格好のほうが見えるから! 足下ろせって!」
「ううう……」
やむをえず足をどけると、アカツキが立ち上がって土を払った。
地面に転がった缶を拾い上げながら、呆れたようにため息をつく。
「つか、パンツ見えたくらいでそんな大騒ぎするって、センセーとはあんまり関係が進んでないわけ?」
「うあっ! やっぱり見たんだ!」
「いや、今の場合は仕方ない……ていうか!」
不意に腕を取られて、私は自販機に押し付けられた。
「今の状況分かってる? 知紗、俺に脅されてるんだけど?」
間近に迫った顔には、何かを企んだような笑みが咲いている。
背筋がぞっとするほどの黒い微笑なのに、私の心臓は何故か高鳴った。