キミが泣くまで、そばにいる



「さっきの場面をしらばっくれても、昨日のこれは言い逃れできないんじゃない?」
 

言われて、息をのむ。
 
見せられたスマホには、木々に囲まれながら抱き合う私と先生の姿が録画されている。


「ど……動画!?」

「そ。つい撮っちゃった。これをネットにアップしたら、先生はさぞ困ったことになるよなぁ」
 

誰にともなくつぶやくアカツキを、睨みつける。


「ひ……卑怯もの!」

「わあ、ありがとう」
 

にっこり笑う彼に、一瞬時が止まった。


「ほ、褒めてないんだけど……」

「いやー微笑み王子とか呼ばれてると、ストレス溜まるんだよね。だから発散したくて。ちょうどいい獲物を探してたんだ」
 

そんな恐ろしいセリフを満面の笑みで言われましても……!


「さて知紗。どうする? 10秒もあればネットにアップできるんだけど」
 

スマホをちゃちゃっと操作すると、アカツキは「じゅう、きゅう」とカウントダウンを始める。
 

握った手のひらにじんわりと汗がにじんでいった。
 
こんなの、選択肢なんてないじゃない。


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