キミが泣くまで、そばにいる
窓側の騒がしさに視線を向けた。
昼休みに入ったばかりの教室。喧騒を突き抜けるような笑い声に、派手目な女子たちが目を光らせて群がっていく。
「なに爆笑してんのぉアカツキぃ」
「声でかいしー」
語尾を伸ばし、わかりやすく媚びを売る彼女たちに、“アカツキ”は笑いかける。
「いや、このコメントがバカすぎて……」
スマホを見ながら「あはは」と笑い崩れる彼の髪は、差し込む光をすべて吸収するような、何とも言えない人工的な色をしている。
砂とか灰とかを思わせるくすんだネズミ色に、ほんのちょっと茶色を混ぜたみたいな……とりあえずあれは、絶対に地毛じゃない。
「ちーちゃん、どうしたの? 恐い顔して」
正面でお弁当を広げていたレミ――北條玲美(ほうじょう れみ)――が、さらさらのロングヘアを揺らして首を傾げた。
「あ、うん……あの髪、何色なんだろう、と思って……」
「あの髪?」
私の視線を追って振り向いたレミは、「ああ、微笑み王子」とうなずく。