キミが泣くまで、そばにいる
「は、はいぃ」
アカツキは満足そうにうなずくと、派手系の女子たちに囲まれながら教室を出て行った。
笑顔で命令する微笑み王子と、一声で飛んでいく私。
ご主人さまと犬。
ここ一週間ですっかり当たり前になった光景を、クラスメイトたちはそう呼んでいる。
「今日も王子のお使いかよ、忠犬ちさ公」
誰が言い出したか、そんなあだ名まで浸透しつつある。
「ちさ公、ついでに俺のジュース買ってきてよ」
軽口を叩いてきた男子に、私は番犬よろしく歯をむき出して見せた。眉間を寄せ、金髪セイにバカにされた低い鼻の頭に皺を刻めば、世紀末の形相のできあがり。
「ぐるるる」
唸り声をあげると、男子は青い顔であとずさる。
「真辺お前……本当に女子かよ……」
不安げな顔でささやきあう彼らに、
「わん!」
と全力で吠えてから、私は頼まれごとを思い出し、大急ぎで職員室に向かった。