キミが泣くまで、そばにいる



 教室に戻ってくると、先にお弁当を食べ始めていたレミが「おつかれさまー」と微笑んでくれた。

 少女漫画で言えば背景に満開の花をあしらってあるような美少女の微笑みだ。アカツキによる理不尽な扱いでねじれた心が、ゆるっと元に戻る瞬間だった。

「ちーちゃん、クラスの男子がドン引きだったよ」

 レミが楽しそうにスマホを向けてくる。画面には世紀末の形相を浮かべた私と、あとずさる男子の姿が激写されていて、私は飲みかけのお茶を吹き出した。

「わああ、何撮ってんの!?」

「だって面白そうだったから」

 にこにこと無邪気に笑うレミが、どことなくアカツキとだぶって、頬がひきつる。

 顔面が可愛いうえに、微笑みながらえげつないことをするって……。まんまアカツキじゃないの。

「それ……ネットにアップしたりしないよね……?」

 念のために尋ねると、レミは顔色を変えた。

「そんないじめみたいなことしないよー!」

 心外だとばかりに語気を荒げる友人に、私は首を縮める。

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