キミが泣くまで、そばにいる
それはね、遡ること一週間前、中庭で交わされた理不尽な契約のせいで……というようなことを、私はレミに説明していない。
というか誰にも言ってない。むしろ言えない。だって話したら先生との関係をバラさなきゃいけなくなる。
「ええっと、それは……」
お母さん渾身のウサギ型ウィンナーに容赦なくかぶりつきながらもごもご口を動かしていると、レミが冗談めいた口調で言った。
「なんか、弱みを握られちゃったって感じで、こき使われてるよね」
ウサギさんウィンナーがぽろりと箸からこぼれ落ちる。一緒に目からウロコが落ちた気分だった。
そうか、そう言えばいいんだ。
「そうなの! じつは弱みを握られちゃってさ」
レミは大きな目をまたたいた。
「え、ほんとに?」
「うん、微笑み王子ってあんな爽やかそうに見えて、なかなかクセモノで」
「え、ちーちゃん王子と接点あったの? ていうか、弱みって?」
「う、ぐ」
ウサギさんウィンナーが喉に詰まった。