キミが泣くまで、そばにいる

”微笑み王子”こと、窓際の前から2番目の席にすわる井端暁(いばた あかつき)は、

すらりとした長身でびっくりするくらい顔が小さく、モデルめいた風貌をしている。

顔も整っていて、大きな目と厚めの唇は、カッコいいというよりも可愛い。

そんな顔で無邪気に笑うから、クラスの大半の女子は入学1か月ですっかり彼の虜になっている。


私は彼の、嫌味なくらいよく似合っているマッシュヘアに目を凝らした。

ワックスで流した髪からは、黒いピアスをつけた耳がのぞいている。

あんな攻めた格好をしている1年は、きっとまだ彼しかいない。


「頭髪検査とか大丈夫なのかな? あの髪、なんだか人工的で人形みたい……」
 
私が声をひそめると、レミはぱっちりとした目をまたたいた。

「えーそう? アッシュブラウン、カッコイイじゃーん」
 
そんなふうに言っても、彼女は特に興味を示すでもなく自分のお弁当箱に向き直って、卵焼きをほおばる。

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