キミが泣くまで、そばにいる
女子に囲まれてもまったく動じない微笑み王子を遠くから観察していると、不意に彼がこちらを向いた。
目が合って、とっさに顔を逸らす。
心臓が慌ただしく鳴りだして、私は気持ちを落ち着けるようにペットボトルのお茶をぐいっとあおった。
よみがえるのは、昨日の中庭での出来事だ。
私と先生を見て、含むように笑った――
「真辺さん」
「ふぐっ」
飲み込んだお茶が変なところに入って、私は咳き込んだ。
涙目で顔を上げると、すぐそこにニッコリと微笑む王子の姿がある。
「ちょっと、いい?」
教室のドアを指さして微笑む彼に、黒い気配を感じて、私はただ黙ってうなずいた。