キミが泣くまで、そばにいる


 赤や黄色など、先生が書いた通りに色を使って書き留めている私と違って、アカツキのノートは黒と青のみですっきりしている。

 そして私のノートには書かれていない文章もちょこちょこ書き込まれていた。

「え、先生こんなこと書いてた?」

 習った公式の横に書かれた見覚えのない文言を指差すと、アカツキは軽く首を傾ける。

「書いてはないかもな。喋ってた言葉をメモっただけだし」

「え、アカツキ、先生の話までノートにとってるの!?」

「いや全部じゃないけど。なんか重要っぽいと思ったことだけ」

 アカツキの教科書に視線を移すとカラーマーカーでアンダーラインが引かれ、授業でやらなかった演習問題を解いた形跡も見られる。

 真っ白な自分の教科書と見比べて呆然としていると、反対にノートを覗き込まれた。

「知紗は色を使いすぎなんじゃん? ノートをきれいにとって勉強した気になるタイプでしょ」

 そ、そのとおり!

 心の中で大正解! と叫びながら、微笑み王子をまじまじと見る。

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