キミが泣くまで、そばにいる


 普段はコアラみたいにのんびりしている高槻くんがあんなに慌てるなんて、よっぽど大事な用なのかな。

 思っていると、となりでアカツキがつぶやいた。

「もう4時すぎか」

 広げていた勉強道具をてきぱきとカバンにしまい、席を立つ。

「俺も今日は行くとこあるから、帰るわ」

「おー、じゃーな」

 律儀に返事をするトワくんから、私は遠ざかっていく背中に視線を移す。

 店内にいる女の子たちが、顔を輝かせながらアカツキを目で追っていた。

 同じイケメンでも黒髪の高槻くんより、派手な頭のアカツキのほうが人目を引くのかもしれない。

 店を出る姿を見送ってから、私は急いで立ち上がった。トワくんが不思議そうに目を上げる。

「どうしたチーコ」

「あ、あの、私も用事を思い出したから帰るね」

 トワくんの返事を聞かず、通路を駆け出した。

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