キミが泣くまで、そばにいる


『ごめんね。俺、そういうの苦手だから』

 告白されると、満面の笑みを浮かべてそう言うらしい。

『苦手』の意味が、ひとりだけ特別な存在をつくることを指すのか、それとも女子全体を指すのか。

 告白して破れた女の子のあいだで噂になり、結果、アカツキは一部の女子のあいだで”女に興味がない人”という認識になっているらしい。

 それを聞いても、本人は「あはは」と笑うだけだ。否定も肯定もしない。

 アカツキにはそういうところがある。
 笑ってけむに巻くというか……。

 仲間や女の子に天真爛漫そうな笑顔を見せていても、その実、あんまり自分の本心を見せていない気がする。


 ――泣くことになるよ

 ふと、静かな目を思い出した。

 普段の微笑みとは正反対の、感情の見えない真っ黒な瞳。

 人形みたいに完璧なルックスで常に微笑んている王子よりも、あのときのアカツキのほうが私は”人間らしい”気がした。

 語らないはずの彼の瞳が、何かを強く訴えかけているように思えた。

 あのときのアカツキのほうが、私はよっぽど――

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