キミが泣くまで、そばにいる


「あっくん!」

 遠くで聞こえた声に、意識が戻る。

 見ると、駅のほうから手を振ってアカツキに駆け寄ってくる人影があった。

 茶色の長い髪が艶やかに揺れる。シンプルだけど爽やかなブルーのワンピースが、人々の視線を引きつける。

 美人だ。
 アカツキと並んで立っても見劣りしない。それどころか……。

 心臓がなぜか激しく脈打った。

 見てはいけないものを、見てるから……?

 相手の女の人は制服じゃないし、メイクの完成度からいっても同じ高校生とは思えない。

 きっと年上だ。それでも、アカツキと並ぶと美男美女でお似合いだった。

 周囲の人がふたりを見る。ドラマの撮影でもしてるのかと、カメラを探す人までいる。目が吸い寄せられてしまう気持ちが、私にもよくわかった。

 それくらい、ふたりは同じ華やかな雰囲気を持っている。

 彼女……なのかな?

 念のため撮っておこうとスマホを向けた瞬間だった。

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