キミが泣くまで、そばにいる


 ブルーのワンピースの裾が、波打つように翻る。アカツキの首に、細い腕が巻きつく。

 カシャッとカメラが鳴ったのと、女の人がアカツキに抱きついたのが同時だった。

 ふたりの会話は届いてこない。

 ただ、笑い合う姿が目に入るだけ。

 彼女がアカツキの手をとり、ふたりはなにやら言葉を交わす。その穏やかな表情から、親密さがうかがえる。

 少なくとも、学校内であんなふうに女の子と接する微笑み王子は、見たことがない。

「……ふうん」

 思い出されるのはファストフード店で高々と響き渡ったセイのセリフだ。

 ――年上サイコー!

 アカツキも、セイと一緒だったということか。

 学校では女の子を振りまくり、女子に興味がないように見せかけて、学校外で年上の女の人と付き合っていたわけだ。

 ズームにして、顔がわかるようにふたりを撮る。

 カシャッ。音が鳴って、広場の一角が切り取られる。

 ボタンを押しながら、つい画面に見入ってしまった。

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