キミが泣くまで、そばにいる


「私、見てしまったんだから!」

「おい、うっせーぞ、ちィ」

 女の子たちとしゃべっていたセイに睨まれたけど無視する。

 休み時間の教室はただでさえざわついているのに、アカツキの周囲には取り巻きやファンの子が集まっていて人口密度が高い。

 すなわち、ここにいるみんなが証人になってくれるということだ。

 私が王子の犬から解放される瞬間の。

「何を見たって?」

 相変わらず笑っているアカツキに顔を寄せ、耳元でささやく。

「二股……してるでしょ」

「えっ?」

 目を丸めている微笑み王子の鼻先に、くらえ! とばかりにスマホを突き出した。

「この場でバラされたくなかったら、もう私をパシるのやめて」

 周りの女子たちが「なになに、どうしたのー?」と声を上げる。

 騒がしい教室の一角で、アカツキは私のスマホを見たまま微動だにしない。

 年上美女と抱き合ってる写真と、名門女子校の美女と腕組みをしている写真を加工して『浮気現場♥』と文字入れをした画像に、釘付けになっている。


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