鬼神様と××しました
「私を恨むなよ、人間。あんたには、私の気持ちはわからないさ。弱い妖力のせいで、妖怪界からはバカにされ…この醜い顔のせいで、幸せにもなれない。だからせめて…人間界では、いい思いさせておくれよ」


妖怪はそう言って、私の頬に手を近づけた。

すると、手の爪が一気に長く伸びて、私の頬をかすった。




「あんたと過ごした18年間は、楽しかったよ。この日が待ち遠しかったからね…ヒヒヒヒヒヒ♪」



妖怪の笑い声も、もう私の耳には届いていなかった。


私の頭は、違うことを考えていた…



お母さんと過ごした日々…

私にとっては、大切な日々だった…


でも…

お母さんはお母さんではなく、妖怪だったと知った今…


私の思い出は全て…

嘘になってしまうんだ…



毎年誕生日は…盛大にやってくれたお母さん…

でもそれは…

今日の日を、楽しみにしていたからなんでしょ?




「………ぅ」

「泣いたって無駄だよ!さよなら、雪希っっっ」


妖怪が腕を持ち上げる。

私は目をつむった…







っっっ!





「…おっと。俺の婚約者を、傷つけんのは止めてくれよ」


!!!


覚悟を決めて、目をつむった時…

聞き慣れた声が、私の目の前から聞こえてくる。


私は、そっと目を開けた…
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