鬼神様と××しました
「由希。よく聞け」

「…………はい」


源喜さんは、私の乱れた髪を直し、口元の血を指で拭いてくれた。

そして耳元で、話し始める。




「俺がお前を抱えて、辰彦の元へ連れて行く。そしてあいつを捕まえるから、そしたらお前が…………」




源喜さんはそう言うと、側にある自分の刀を手に取った。

そしてその刀を、私にそっと差し出した。




「…お前がとどめを刺せ」

「えっ…」


とどめって…

この刀で、辰彦を刺せってこと!?




「できない!そんなこと…」

「できるよ。つーか、それしか勝つ道はない」

「ちょ、ちょっと待って!!」


源喜さんは私を抱えると、勢い良く空の方へ飛んで行く。

そして、私の出した水の渦にやられている辰彦を空から眺めていた。




「…あの渦がおさまったら、あいつに近づくから、とどめを刺せよ」

「げ、源喜さん…私…」


渡された刀を持つ手が、さっきからずっと震えている。




「これしか方法はない。頼むぞ」
< 271 / 303 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop