駅前ベーカリー
「…そうですね。こうして重みを感じると、理真さんがいるって感じがします。」
「え、あ、ごめん。体重かけすぎた!」
「違います。もっとかけてください。」

 そう言うと岡田はさらに腕の力を強めた。理真の方はというと体重をさらに預けるしかなくなる。

「…こんなこと言うと凛玖くんは嫌かもしれないけど。」
「何ですか?」
「凛玖くんのそばにいると、今はね、ドキドキするっていうより安心するの。ゆっくりできる、優しい気持ちになれる…何より、私、幸せだなぁってすごく実感できる。」

 そこまで言って、理真は岡田の背中に手を回して身体をさらに岡田に密着させた。岡田の呼吸や鼓動が耳から伝わってくる。

「あんまりデートらしいデートができなくてごめんね。それでもこうして一緒にいてくれてありがとう。凛玖くんがいるってことが私の最大の癒しだよ。」
「…僕も、理真さんが癒しです。それはずっと前から、多分出会った頃から変わっていない。


 いつの間にか腕が解かれ、またしても視線が絡まり合う。

「僕が理真さんの癒しなら、もっと甘えてください。弱音とか仕事の愚痴とか何でも聞きます。」
「充分すぎるほど甘えてると思うんだけど私。」
「…足りないですよ。男としては甘えられたら燃えます。」
「そっか。じゃあ…」

 甘える、にはどうしたら良いのだろう。甘い言葉?触れる?話す?そんなことを理真が考えていることに岡田も気付いたのだろう。

「困ってますね。」

 苦笑が零れた。 
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