駅前ベーカリー
「…凛玖くん、思っていたよりずっと押しが強い。」
「すみません。理真さんが可愛いからつい。じゃあもう悪戯しません。真面目に肩揉みします。」

 岡田はそう言うとまた指に力を込める。心地よいリズムと力加減が理真の凝り固まった肩をほぐしていく。

「凛玖くん肩揉み上手だね。ほぐれる!」
「痛くないですか?」
「うん。大丈夫だよ。ありがとう。あ、じゃあ今度は交代しよう。私が凛玖くんの肩揉むよ。」
「…いいえ。それは大丈夫です。その代わり…。」
「…?へっ、あっ、きゃあ!」

 脇に手を入れられて立たせられる。くすぐったがりの理真としてはあまりに変な声が出て恥ずかしくてたまらない。

「ごめんなさい。くすぐったかったですか?」
「ごめんね、私脇とかお腹とかもう色んなところがくすぐったくて…。」
「これからは理真さんに触れるとき、気をつけますね。」
「…っ、だ、大丈夫だよ。慣れたら大丈夫だから。」
「そうですか。じゃあ早く慣れてもらうために…」
「あっ、きゃあ!ちょ、ちょっと私重っ…。」

 ふわりと理真の体が浮いた。それは岡田が抱き抱えていたからだった。不安定な位置にいるため落ち着かず、理真は岡田の首にしがみつく。

「重くないですから、もっとちゃんとしがみついてください。その方が僕が嬉しい。」
「っ…こんなことしなくても一人でちゃんと歩ける…。」
「知ってますよ。理真さんは僕より大人で自立してるってこと。だからこそこうやってしがみついてもらいたくて。あと、お昼寝。」
「え?」
「一緒の布団で寝たいなって。」

(そういう言い方はずるいし、おまけに悔しいくらいに可愛い。)

 理真の思いをよそに、岡田は上機嫌でニコニコと笑っている。笑顔を崩さず奥の部屋、つまりは理真の寝室に向かっていく。
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