駅前ベーカリー
* * *
運動会が開けた月曜は代休だった。いつもならば水曜日と金曜日の朝しか行かないのに、今日はただの気分でランチの時間帯に駅前のベーカリーに足を運んだ。
(いない、よね。多分。)
だからこそ足を運んだとも言える。目をそらしたことが何だか気になって、顔を合わせにくい。
「いらっしゃいませ。」
「あ。」
「こんにちは。月曜日のこんな時間に来るなんて、初めてじゃないですか?」
「っ…こ、こんにちは。」
またしても目をそらしてしまう。そらしているのに目も泳ぎ、言葉がつっかえる。
岡田がいるかもしれない可能性を考えていないわけではなかった。正直に話してしまえば、会えるかもしれないと期待もしていた。それなのにいざ岡田がいるとなるとこうなるのだから、初恋を知らない女かと自分で自分に突っ込みをいれたくなる。
(だから!目をそらすのは失礼だってば!)
そう思う程度に常識はあるつもりだし、岡田の目を見て話したい気持ちはたくさんあるのに、心臓の鼓動がそれを許してはくれない。
理真はいつもと同じクロワッサン、そして何だか甘いものが食べたくなってメープルマフィンをチョイスした。
「店内でお召し上がりですか?」
「はい。」
「お飲み物は…僕からのサービス、ということで。」
「え?」
理真は財布を開こうとした手を止めて岡田を見た。もちろん目の前の岡田は笑顔だ。
「席までお運びします。お楽しみに。」
「でも…。」
「運動会、理真さんが一番頑張ってたと思います。だからそのご褒美です。僕があげられるものはそれくらいしかありませんから。」
理真はパンの代金だけを支払い、いつもの席に腰掛けた。店内には理真と岡田以外には誰もいない。自分の鼓動の音がかき消されない程には控えられたBGMが今日はやけに憎い。
運動会が開けた月曜は代休だった。いつもならば水曜日と金曜日の朝しか行かないのに、今日はただの気分でランチの時間帯に駅前のベーカリーに足を運んだ。
(いない、よね。多分。)
だからこそ足を運んだとも言える。目をそらしたことが何だか気になって、顔を合わせにくい。
「いらっしゃいませ。」
「あ。」
「こんにちは。月曜日のこんな時間に来るなんて、初めてじゃないですか?」
「っ…こ、こんにちは。」
またしても目をそらしてしまう。そらしているのに目も泳ぎ、言葉がつっかえる。
岡田がいるかもしれない可能性を考えていないわけではなかった。正直に話してしまえば、会えるかもしれないと期待もしていた。それなのにいざ岡田がいるとなるとこうなるのだから、初恋を知らない女かと自分で自分に突っ込みをいれたくなる。
(だから!目をそらすのは失礼だってば!)
そう思う程度に常識はあるつもりだし、岡田の目を見て話したい気持ちはたくさんあるのに、心臓の鼓動がそれを許してはくれない。
理真はいつもと同じクロワッサン、そして何だか甘いものが食べたくなってメープルマフィンをチョイスした。
「店内でお召し上がりですか?」
「はい。」
「お飲み物は…僕からのサービス、ということで。」
「え?」
理真は財布を開こうとした手を止めて岡田を見た。もちろん目の前の岡田は笑顔だ。
「席までお運びします。お楽しみに。」
「でも…。」
「運動会、理真さんが一番頑張ってたと思います。だからそのご褒美です。僕があげられるものはそれくらいしかありませんから。」
理真はパンの代金だけを支払い、いつもの席に腰掛けた。店内には理真と岡田以外には誰もいない。自分の鼓動の音がかき消されない程には控えられたBGMが今日はやけに憎い。