性別「少年」属性「乙女」


「……ほんとに、いいんですか?」



「受け取ってくれる?」



恐る恐る尋ねたボクに、陸さんが、パッと顔を輝かせて聞き返す。



ああ。



ボクが受け取ることで、陸さんがこんなに喜んでくれるなら。



もらっちゃっても、いいのかな。



「ありがとう、ございます」



「俺のほうこそ、ありがとう。よかった。マコト君、なんだかいつのまにか消えちゃいそうな気がしてさ。ちゃんと、つながっていられる物、あげたかったんだ」



陸さん、ほんとにうれしそうだ。



「ボク、これ、陸さんに連絡するときだけ、使いますね。他には誰にも、メルアドも電話番号も教えません」



「え?いいんだよ?普通に使ってくれて」



「ボクも、これで、陸さんとだけつながっていたいから」



陸さんとボクをつないでくれる、特別の携帯電話。



ずっと、大事にしよう。



「マコト君」



陸さんの、声。



顔を上げたとたん、陸さんに、抱きしめられた。



蝉の、声。






< 130 / 525 >

この作品をシェア

pagetop