性別「少年」属性「乙女」
変わる心
点滴スタンドにつかまって、ボクはそっと、ドアまで歩いた。
ドアを、静かに開ける。
あ。
この病室、ロビーのすぐそばにあったんだ。
暗いロビーに、陸さんと、陸さんのお父さんが座っている。
ちょうど、ボクに背中を向けている位置だから、ボクはドアにもたれたまま、二人の背中を見ていた。
なんだか、大丈夫みたい、かな。
そう、だよね。
いくら仲が悪くっても、夜中の病院で殴ったりしないよね。
よかった。
戻ろうかな、と思ったとき。
陸さんのお父さんの声が聞こえてきた。
「……あれは、いったいどういう育てられ方をしたんだ」
「マコトのことかよ」
「ほかに誰がいる。誠くんは、俺に謝ってきた。生きていてごめんなさい、って。初めはいやみかと思った。本気で、そう思っているんだと気付いて、血の気が引いた」
どういうこと、だろう。
だって、ほんとうに申し訳ないって、思ったんだ。
陸さんが、軽く息をつく。
夜中だから、小さな声なのに、よく聞こえるんだ。
「マコトらしいな」
「恨まれていると思っていた。お互い様だと思って、ひどいことも言った。……言っていい相手じゃなかったと、心底思い知ったよ」
「マコトは、たぶん、人を恨んだり、憎んだりしたことが、ないんだ。信じられないけど」
ドアを、静かに開ける。
あ。
この病室、ロビーのすぐそばにあったんだ。
暗いロビーに、陸さんと、陸さんのお父さんが座っている。
ちょうど、ボクに背中を向けている位置だから、ボクはドアにもたれたまま、二人の背中を見ていた。
なんだか、大丈夫みたい、かな。
そう、だよね。
いくら仲が悪くっても、夜中の病院で殴ったりしないよね。
よかった。
戻ろうかな、と思ったとき。
陸さんのお父さんの声が聞こえてきた。
「……あれは、いったいどういう育てられ方をしたんだ」
「マコトのことかよ」
「ほかに誰がいる。誠くんは、俺に謝ってきた。生きていてごめんなさい、って。初めはいやみかと思った。本気で、そう思っているんだと気付いて、血の気が引いた」
どういうこと、だろう。
だって、ほんとうに申し訳ないって、思ったんだ。
陸さんが、軽く息をつく。
夜中だから、小さな声なのに、よく聞こえるんだ。
「マコトらしいな」
「恨まれていると思っていた。お互い様だと思って、ひどいことも言った。……言っていい相手じゃなかったと、心底思い知ったよ」
「マコトは、たぶん、人を恨んだり、憎んだりしたことが、ないんだ。信じられないけど」