性別「少年」属性「乙女」
小さい頃、可愛がられたことなんて、ひとつも覚えてなくて。
きっとそれは、自分の心を守るためだったんだろうけど。


それでも、ボクは、生きていたから。
いらない子供でも、生きていくしかなかったから。


自分が愛されることなんて絶対にないって、自分に、言い聞かせてた。
自分が愛してもらえないのは当然で。
だから、自分に優しくしてくれる人には、感謝しなくちゃ、って思ってた。


優しい人だから、僕にも優しくしてくれる。
でも、いつかは離れていく人。
だから、明日離れても、大丈夫なようにしなくちゃ。

ボクの周りの全ての人を、そう思ってた。
みっちゃんも、吉田も。
父さんのことも。


ボクは、これ以上傷つくことが、怖かったんだ。
怖くて、ボクのすぐそばで、ボクを愛してくれている人がいることに、気付けなかった。


でも。


ボク、生きていても、いいんだよね。
生きててよかった、って、思ってくれるんだね。


おとうさん。


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