性別「少年」属性「乙女」
ボクは、首を横に振った。


「さっきね、刑事さんがきたんだ」

「何か嫌なことでも言われたのか。俺が抗議してきてやるよ」

「違うよ陸さん。……ボク、ずっと忘れてた。ボクがぶつかった、トラックの運転手さんのこと。ボクはこうして、治療してもらって、元気になったけど、あのおじさんは、ボクが飛び出したせいで、罪になって、仕事も辞めさせられちゃうんだ。ボク、ひどいことをしちゃったんだ」


どうして、気付かなかったんだろう。

誰も傷つけたくなんかない。

ずっとそう思っているのに、どうしてボクは、いつも誰かを傷つけちゃうんだろう。


「おじさん、きっと許してくれないよ。ボク、どうしたらいいんだろう」


もっと、違う方法があったかもしれないのに。

ボクがちゃんと、最初から有希ちゃんのこと、もっと気にしていたら。

そしたら、誰も傷ついたりしなかったのに。
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