性別「少年」属性「乙女」
「……もしも、お母さんがいたら、もっと違った自分になれたのかな」



ボクの記憶には、母親がいない。


小さい頃に病気で亡くなったと、父さんは言うけど、あまり母さんのことは話してくれない。



多分、あまり仲が良くなかったんだろう、と思っているけど。


でももし、少しでも母親の記憶があったら、もしかしたら、もっと、女の人を好きになれたりしたのかな、って、時々思う。


世の中には、小さい頃に母親と別れた人なんてたくさんいるし、そんなこと関係ないって、わかってはいるけど。


「……お母さんに、会いたい?」


「そういうわけじゃないんです。ただ、もしいたら、ボクはこんな自分じゃなかったかもしれない、って」



もっと、父さんの望むように、積極的になって。
吉田とも、可愛い女の子の話とかして。


こんなふうに、男の人に、ひそかにドキドキするようなこと、なかったかもしれない。


< 60 / 525 >

この作品をシェア

pagetop