愛おしい君へ
それから10年…
君と子供が幸せなら
僕のお葬式があってから
約10年経った今。
僕はまだ成仏出来ずにいた。
君は40歳、
子供は15才。
君はもう40だけど、
なんだかとても若く見えるな。
子供は背もとても高くなって。
それに、本当に良い子に育った。
毎日毎日、
君の家事の手伝いをしてる。
二人共、
幸せそうで良かった。
…だけど。
本当は、僕も
二人ともっと長く居たかった。
どうも、この理由のせいで
成仏ができないみたいだ。
僕は、いつものように
二人の食卓での話に耳を傾けていた。
いつもは、
子供の学校での話だとか、
芸能人の話をしているけど
今日は違っていた。
聞こえてきたのは、
ママね、
再婚しようと思うの。
ああ。
君はもう、新しい道を
歩いて行くんだね。
そうかそうか。
それは…良かった…。
気づいたら、
流れるはずのない涙が
ホロリと
僕の透けた頬を伝うのがわかった。
うん、
それでいいんだよ。
君が幸せになれるのなら
僕はなんだっていい。
君の笑顔を見ていられるのなら
僕は、
僕は、
僕はそれだけで幸せだ。
子供も
賛成してるみたいだね。
良かった。
二人の様子をしばらく
眺めていると、
二人が
食卓の席を立ち、
僕の仏壇の前へやって来た。
あなた、
私、再婚することにしたの。
だけど、あなたのことを
忘れたわけじゃないわ。
私は、あなたを一生愛してる。
忘れることなんてできない。
けど、
いつまでもあなたに
迷惑かけてたら
あなたは
ずっと成仏できないままでしょ?
だから、
これからは、
新しいお父さんと
子供と、、、
あなたで
仲良く暮らしていきたい。
そう思ってるの。
今まで近くで見守っててくれて
ありがとうね。
もう天国へ行って大丈夫よ。
次は、空から私達を
ずっと見守っていて欲しい。