幻想
 「謙遜しない女の子って珍しいわ」
「よくいわれます」
 鈴音は機械的に応えた。年配の女性というのは難しい。女盛りを過ぎ、結婚して子供が大きくなれば、暇を持て増し、昼ドラマや映画の純粋な、またはドロッとした恋愛動画を観ては、〝もう一度私も〟〝忘れてた感情を再構成〟なんていう思念が脳裏をかすめ、ふとした瞬間に暇という寂しさがこみ上げる。なので、パートとして働きに出る。それが目の前の年配女性店員だろう、と鈴音は推察する。
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