幻想

　「黒髪で、そこまで可愛いと男には困らないでしょ？」
　その問いに関して鈴音は首を傾げ、解答が頭に浮かんだ。「私を満足させた人は、まだいない」
「ホホホ」と口元をポンポンポンと年配女性店員は三回手のひらで叩き、「そのドライな感じは、男がほっとかないわ。男は狩人だから、追いたい、振り向かせたい、という気持ちが強いの。でも、あなたは」とその後の展開を鈴音に委ねるように顎を突き出した。
　なので、「振り向かない」と鈴音は端的に解答を提示した。
　その一言に年配女性店員は満足そうな表情を浮かべていた。