幻想
 口をニヤリと開け、その開けた先の前歯には薄いピンクの口紅が付着していた。
「あなたみたいな女性は不倫でもした方がいいわよ」
「なぜ?」と鈴音。
「普通じゃ無理だと思うの。不倫には刺激が溢れているから、よ」
 あたかも自分はしてきた、というような口ぶりを中年女性が誇らしげに言った。
「不倫をしたことがある?」
 鈴音は訊いた。
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