幻想
 「あなたもね、今はつるりとした肌で、きゅっとしたお尻を際立たせる花柄のワンピースなんて着ているけど、女は三十中盤ないしは後半いくと駄目。本当に運のない人は二十代後半で劣化が始まるの」
 劣化、という熟語に鈴音は苦笑した。中年女性店員が言うと尚更説得力がある。
「それでも三十代でも綺麗な人は多い」
 チッチッチッ、と人差し指を立て中年女性店員は鈴音の意見に対して否定を試みた。「そう見えるだけなの。独身で三十を超えると、社会に揉まれ、男に揉まれ、胸も揉まれている内に、独り身の耐性ができて、強くなっちゃうの。それでいてコミュニケーションツールの発達で手軽にみんなと連絡がとれる。それでも、寂しいはずだけどね」
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