幻想
 「やあ、お待たせ」
 彼女は振り向いた。そこには恭一がいた。

「遅い」
 と鈴音。
「怒っているのかい?」
 心と財力に余裕のあるものだけが見せる笑みをみせた。ゆっくり、ふわりと口角が浮き上がる。それを見せられると何もかもが許されてしまうから、鈴音は不思議だ。この笑みに関しては努力で会得できるのではなく、天性と認識させてもらった方が事は穏便に運ぶ。
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