幻想
 私より鏡。
 人間だから自分好きなのは仕方はないが、度が過ぎる。そんな男ばかりを胡桃は選んでいる。
「胡桃ってさ、本当に男運ないよね。もう私達三十だよ。味噌汁だよ。ごめん、三十路だよ。学びなよ」
 胡桃は冗談混じりで言った友達の一言が蘇った。
「はあ」
 彼女はまた溜め息をつき、窓の外を眺める。家屋が適切に並び、景色がリモコン操作のように早送りされていく。二十代を過ぎてあっという間に三十路になった人間のように。
< 5 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop