幻想
 初老の女は鳥男に近づき、「あり、に決まってる」と左頬を平手打ちした。それも、梨花と同じ場所。
 鳥男の瞬きの連打が止まらない。そこには多数の、なぜ?が頭上に煌々と灯されていることだろう。
 梨花は鳥男の肩に手を乗せた。「席を間違えるとビンタされるのよ。大変よくできました、って感じにね」
 その直後、鳥男は目を大きく見開き、何か言いかけた。
 が、「あらあ」と初老の女が遮る。「席は間違えちゃいかんんな」と初老の男が追随する。「結講、いい男ね」と絹枝の好みを露呈させる。
「そもそも、あなたはどこの席なの?」
 梨花は鳥男が手に持っていた特急券をむしり取り確認した。
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