水底に囁く。
ぼくは光のような、真綿のような、ふわふわとして実体のないからだを、

漂わせ、移ろわせ、彼女について行く。

彼女の向かう闇の先に、やがて、

巨大な真珠のように光を放つ、白亜の宮殿がそびえ立っているのが見えはじめた。

輝くばかりに白い宮殿には、金銀で精緻な装飾がほどこされ、

ところどころに、蒼碧紅紫の色とりどりの宝玉が散りばめられている。

深い闇と淡い光と、

ときおり地上に焦がれてのぼっていく泡以外にはなにもない、海底の世界で、

それだけが一つの希望のように輝いていた。
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