水底に囁く。
「ここはまだ、底ではないのよ」
宮殿の門をくぐりながら、人魚は言った。
気泡のような儚げな声は、しかし、海の水にくぐもることなく、まっすぐにぼくの耳に届いた。
(どういうこと?)
底でなければ、何なのか。ぼくはすぐさま尋ねた。
彼女が退屈しないように。彼女に飽きられないように。
彼女はふふ、と笑うと、答えてくれた。
「この海には、ここよりもずっとずっと深いところがあるわ。
そこは地上の光の届かない、絶望と安息しかない世界。
ここは、そこと地上との、中継地点のようなものよ」
宮殿の門をくぐりながら、人魚は言った。
気泡のような儚げな声は、しかし、海の水にくぐもることなく、まっすぐにぼくの耳に届いた。
(どういうこと?)
底でなければ、何なのか。ぼくはすぐさま尋ねた。
彼女が退屈しないように。彼女に飽きられないように。
彼女はふふ、と笑うと、答えてくれた。
「この海には、ここよりもずっとずっと深いところがあるわ。
そこは地上の光の届かない、絶望と安息しかない世界。
ここは、そこと地上との、中継地点のようなものよ」