磁石な関係
「T.A集合‼︎」
観客で溢れてきたグラウンドに、照井監督のバカデカい声が響いた。
「「「はいっ‼︎‼︎」」」
それに続いて俺達も大声で返事をする。
「えー、じゃあ今日のポジション振り返るぞー…ピッチャー…」
照井監督の薄低い声でポジションをずらずらと述べられる。
「ファースト、金子 潤」
「はいっ‼︎」
聞いているようで聞いていない、名前を呼ばれたら返事をすればいい。
いつもの調子で監督の頭の少し上辺りをぼんやり眺めていると、ガラスに反射した丸坊主がこちらを見つめていることに気が付いた。
背中には【KADO-KO】と黒で刺繍されたユニフォーム。
それを着た見覚えのある顔が歪み、徐々に俺の顔を睨みつける。
きっとあれは、この角川高校に野球推薦で入学してきた生田目 拓也。
きっと俺が野球出来るのを隠していたことが気に入らないんだろうな。
別に隠したつもりもないし、教えるつもりもないけどな。
睨み返しもせずに、ガラス越しでその目をジッと見つめ返す。
「……ねこ…」
あぁ、なんか気に入らない。
「…か…こ…ゅん」
明日どんな顔して学校行けばいい?
「金子 潤‼︎きいているのか⁈」
ハッと我に返ると、照井監督が痺れを切らした表情で俺を睨んでいた。
「あっ、はい、すみません。ちょっと寝不足で」
「お前今日そんなんでファーストできんのか?」
「…監督、俺は俺です。プレーに影響はありませんよ、100%」
「…お前はこのチームの懐刀だ。心配させるな。チームが崩れる」
そう言い捨てると、また淡々と話を始めた。
ミーティング後、給水をしにロッカールームへ戻る、とー
「ー金子 潤」
ドアの前には仁王立ちをした生田目。