磁石な関係


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「T.Aの勝利‼︎」

「「ありがとうございました」」



結局、試合にも上手く集中できないまま、あの後試合は開始された。
振り返るだけでグラつく頭を必死で回転させて、久しぶりにこんな全力でプレーした気がする。

隙を見せれば、すぐに飛んでくる送球をとっては投げの繰り返しで、6回まで同点で持ち越した。
最終的に、満塁のところで俺がサヨナラ打ってきっちり落とし前つけたし、俺的に満足。

アイツ(生田目)はピッチャーだったから、さぞ悔しかったろう(いい気味だ)。



あくまでも練習試合だから、この日は打ち上げもミーティングも無しで現地解散。
頭痛と手首の痛みを松山意外のチームメイトに隠していたため、俺は一番最後にロッカールームを出ることにした。





俺の吐息が僅かに聞こえる部屋の中を、

コンコン

と、ノックの音が響いた。


松山かー…?
いや、そんなはずはない。
松山はさっきまで俺を心配してここにいたからな。

と、なるとー、

「どうぞ」


視線の先には、グレーのチェックスカートに紺色のブレザーと赤いリボンが目に入る。

「大和田です、」


大和田 優香。
T.Aのマネージャー。

もともとこのチームにはマネージャーはいなかった。でも、彼女の兄がここに所属し、彼女も貢献したいとのことで、中学時代からマネージャーを続け4年になるとか。

ちなみに俺の一個上で高校3年生。


彼女に軽く会釈し、自分の手首に救急箱から取り出したテーピングを巻き始めた。

「…私、やるよ」

すかさず、大和田さんがテーピングを俺の手から奪い、ワイシャツの袖から白く細い腕が見えた。

くるくると規則的な方向に巻かれて行くテーピング。


「助かります…」

「これがマネージャーでしょ?」




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