おとななこども
ホッとしている会長に、心の中でまた毒づいた。

「本当を言うと、桃さんを自転車に乗せて家までお送りしたいところですが…」

呟くようにそう言った会長に、あたしは気づいた。

そう言えば、自転車がない。

「あいにく自転車が今メンテナンスに出しているところでして…」

ふーん、メンテナンスか。

って言うか、わざわざそこまでしなくても結構です。

「あの…用事がないならもう帰りますね?」

そう言って話を切りあげたあたしは会長の前を去ろうとしたけど、
「待って」

会長が呼び止めたのと、頬に唇が触れたのはほぼ同時だった。
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