おとななこども
「これね、香りつきのグロスなの♪」

真里はあたしの手にスティック――もとい、グロスを持たせた。

…持ってろって、ことですか?

仕方ないからあたしはショルダーバックの中に入れた。

ちなみにショルダーバックも真里の私物である。

「“彼がキスしたくなる唇へ”って言うキャッチコピーで、今大人気なんだー」

真里ははあと頬に手を当てて、また乙女妄想の世界へ…。

…だからか、おい。

だから会長は、あたしにキスしたんか。

真里に冷めた視線を向けながら、あたしは心の中で毒づいた。
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