おとななこども
そりゃ、中にはあたしたちのような人もいるのかも知れないけど。

「あなたほど美味しいものを僕は知らない」

会長はささやくように言って、
「――ふっ…」

あたしと唇を重ねた。

一瞬、ここが街中であると言うことを忘れてしまった。

唇が離れる。

「――か…会長…!」

自分の手に頬を当てると、熱かった。

「いっそのこと、あなたも食べることができたらいいのに」

会長が言った。

「――な、何言って…」

会長の言っていることがわからなくて戸惑っているあたしに、
「あなたを好きになればなるほど、僕は欲張りになるんです」

さえぎるように、会長が言った。
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