おとななこども
その後は湯豆腐が美味しい店で夕飯を食べて、あたしたちは朝着替えに訪れた呉服屋さんに向かっていた。

その間も、あたしと会長の手は繋がれたままだった。

チラリと、会長に視線を向ける。

「どうかしました?」

会長と目があった。

「――い、いえ…」

目があうことなんてしょっちゅうあったのに。

だけど今はそれが恥ずかしくて、目をそらした。

「桃」

会長はあたしの名前を呼んで、唇に触れるだけのキスを落とした。

あ、呼び捨てだ。

そんな小さな変化なのに、あたしの心臓はドキッと鳴る。
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