おとななこども
会長は、あたしの本当の気持ちに気づいているのかも知れない。

彼が隣にいることを迷惑がっているあたしだけど、本当は嬉しいんだ。

会長があたしの隣に座ってくれて、そのうえ手まで繋いでくれて、嬉しいんだ。

こんなこと言ったら会長は調子に乗るから言わないけど。

「キスしてもいいですか?」

会長の唇が動いて、そう言った。

そう言った彼に、あたしは周りを見回した。

「最低でも、誰か1人は起きているかも知れませんよ?」

そう言ったあたしに、
「構いません」

会長は返した。

「むしろ、あなたに寄ってくる害虫が減ることでしょう」

ささやくようにそう言って顔を近づけてきた会長を受け入れるため、あたしは目を閉じた。
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